第12回 国際歯科医療安全機構学術大会@鶴見大学

2026年7月11日

第12回 国際歯科医療安全機構学術大会 多職種連携フォーラム

腔の健康科学を支えるこれからの歯科医療 
~医科歯科にわたる多職種連携医療の確立を目指して~

日 時:

 2026年7月12日(日) 12:30-17:00

場 所: 

 鶴見大学記念館 第3講堂
 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-3

形式

 現地開催及びZoom Webinarによるオンライン開催(ハイブリッド開催)

プログラム

学長挨拶

 鶴見大学 学長 高田 信敬 先生 

特別講演

 令和8年度歯科診療報酬改定の概要
            厚生労働省 保険局医療課 課長補佐   大坪 真実 先生

 歯科医療施策の動向について
            厚生労働省 医政局歯科保健課 課長補佐 中園 健一 先生

臨床報告:地域を支える口腔健康管理

 オーラルメディシン(口腔内科)の役割
            鶴見大学 歯学部口腔内科学講座   上野 繭美 先生

 地域包括ケアシステムにおける訪問歯科診療
            練馬洋歯科クリニック     院長 草川  洋 先生

教育講演:口腔外科と病診連携 

 関東労災病院 口腔外科            部長 堀江 彰久 先生
 東京科学大学大学院 医歯学総合研究科    准教授 儀武 啓幸 先生
 群馬大学医学部 口腔顎顔面外科・形成外科   教授 横尾  聡 先生
 東京大学大学院口腔顎顔面外科         教授 星  和人 先生

全体総括:これからの歯科医療教育

 鶴見大学                  副学長 里村 一人 先生
 国際歯科医療安全機構            理事長 瀬戸 晥一

セミナー内容

【特別講演】:令和8年度歯科診療報酬改定の概要

 令和8年度診療報酬改定が行われ、6月に施行されました。今回の改定では、中央社会保険医療協議会(中医協)において、「物価や賃金・人手不足への対応」が重点課題とされた他、「2040 年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」等の4つの基本的な視点が示され、この方針に基づいて、「かかりつけ歯科医の機能の評価」や「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の更なる推進」等を改定の柱として個別項目の見直しを行いました。
 本講演では、はじめに今回の改定の概要をお話した上で、本シンポジウムのテーマである医科歯科連携に係る項目について、具体的な改定内容等のご説明をさせて頂きます。

大坪 真実 先生
厚生労働省 保険局医療課  課長補佐


【特別講演】:歯科医療施策の動向について

 少子高齢化による人口構成の変化や歯科疾患の罹患状況の変化、医療や介護等における歯科保健医療に対するニーズの多様化などにより、歯科保健医療を取り巻く状況は大きく変化しています。こうした状況に対応するため、地域において必要な歯科保健医療が提供されるよう、地域の状況に応じた歯科医療提供体制を構築することが求められています。
 厚生労働省において、「歯科医療提供体制等に関する検討会」を設置し、総合的な議論を行っているとともに、令和7年7月より、歯科医師の必要数や適切な配置等に関する具体の分析等を行うためのワーキンググループを設置し、議論を行っています。
 また、歯科衛生士や歯科技工士に関する検討会も開催しており、歯科医療施策の動向について、ご説明させていただくことができればと思います。

中園 健一 先生
厚生労働省 医政局歯科保健課 課長補佐


▶【臨床報告】:地域を支える口腔健康管理
 オーラルメディシン(口腔内科)の役割

 超高齢社会を迎えた我が国においては、多疾患併存、すなわちmultimorbidityを背景にもつ medically complex patient は、幅広い臨床場面で増加している。
歯科医療においても、患者を口腔局所のみで捉えるのではなく、罹患している全身疾患、受けている薬物療法、栄養状態、嚥下機能、認知機能、生活機能、介護環境などを含めた多角的視点に立った評価や患者背景に配慮した治療が求められる。
 また、 multimorbidityに伴うpolypharmacyにおいては、服薬アドヒアランス低下、残薬、処方カスケードなどを背景として、薬剤性口腔乾燥や嚥下障害、味覚障害、食欲低下、低栄養などが発生し、オーラルフレイル、口腔機能低下症、サルコペニア、フレイル、老年症候群へと連鎖し得る。特に口腔乾燥、服薬時のむせ、薬剤の口腔内残留、口腔顎の不随意運動は、歯科診療の場で観察しうる薬剤性障害の重要な症候である。
口腔内科は、口腔病変を局所所見としてだけでなく、その背後にある全身的背景に留意しつつ、より大局的な視点から論理的思考を用いてアプローチする診療領域であり、前述のさまざまな症候を薬剤起因性老年症候群や処方カスケードに関連付けて捉えることで、歯科診療はpolypharmacy対策や全身医療へとつながる。本講演では、medically complex patient に対して、口腔を通して全身を診、全人的視野に立って口腔の健康にあたる口腔内科の意義を整理し、多職種をつなぐハブとしての役割を考察する。

上野繭美 先生
鶴見大学 歯学部 口腔内科学講座


▶【臨床報告】:地域を支える口腔健康管理
 地域包括ケアすステムにおける訪問歯科診療

【目的】
在宅療養高齢者の訪問歯科診療では、医療・介護職種間の情報共有不足が医療安全上の課題となることが多い。本報告は、歯科医師が多職種連携のハブとなり、口腔機能評価と意思決定支援を通じて、安全かつ継続的な経口摂取支援を実践した取り組みを報告する。
【方法】
当院では、訪問歯科診療においてポータブルユニット・レントゲンを用いた歯科治療に加え、兵頭スコア、EAT-10、口腔機能低下症検査などを組み合わせた包括的評価を実施している。さらに、医科・看護・介護職との顔の見える連携を目的とした多職種連携会やオンライン合同カンファレンスを継続的に行っている。本報告では、義歯装着に拒否感を示した在宅高齢者1症例を対象に、ヘルパーと協働した支援過程を後方視的に検討した。
【結果】
口腔ケア・機能訓練を継続し、ヘルパー同席下で咀嚼状況を可視化することで、患者本人の理解と納得が得られた。臼歯咬合の獲得後は義歯装着が定着し、食形態の向上と嗜好品摂取が可能となった。これにより誤嚥リスクの低減と生活意欲の向上が認められ、多職種連携による医療安全の確保が示唆された。
【結論】
訪問歯科診療において歯科医師が多職種連携の中心を担い、口腔機能評価と意思決定支援を行うことは、在宅高齢者の経口摂取支援と医療安全の両立に有効である。本取り組みは、地域包括ケアにおける歯科の新たな安全モデルとなり得る。

草川 洋 先生
練馬洋歯科クリニック 院長


▶【教育講演】:病院歯科口腔外科の病診連携
病院の医科歯科連携から地域の病診連携まで

 近年、病院歯科口腔外科と地域歯科診療所との病診連携の重要性が高まっている。従来の抜歯や外傷、口腔粘膜疾患などの口腔外科疾患の連携はもとより、周術期口腔機能管理における連携は今までにない流れである。また高齢化により医科との連携なしには治療できない患者が増加している事も背景にある。
 今回の講演では、病院歯科口腔外科と地域歯科診療所との連携、院内他科との医科歯科連携について述べたいと考えている。院内で周術期口腔機能管理を行った患者は、退院後は地域へ「逆紹介」して継続管理を行っている。病診連携の緊密な連携は、患者への安全かつ適切な医療提供だけでなく、医療資源の効率的活用にも寄与し、地域包括ケアシステムの要として機能する。

堀江 彰久 先生
関東労災病院 歯科口腔外科 部長


▶【教育講演】:口腔外科と病診連携

 旧東京医科歯科大学(現東京科学大学)の附属病院は長らく医学部附属病院と歯学部附属病院がそれぞれ独立した組織であったが、2020年の10月に病院統合を果たして医系診療部門と歯系診療部門から構成される東京医科歯科大学病院に改組され機能統合が計られた。その後に2024年10月の東京医科歯科大学と東京工業大学の合併による東京科学大学誕生に伴い名称が「東京科学大学病院」に改称された。
 本講演では東京科学大学病院歯系診療部門口腔外科外来における医科歯科連携と病診連携の現状についてお話しできればと思います。 

儀武 啓幸 先生
東京科学大学大学院 顎顔面外科 准教授


▶【教育講演】:口腔外科と病診連携
一般診療科(他科)との真の連携を行うための教育と啓発
 -歯学部教育がもたらす病診連携への弊害-

 今回、わたしに与えられたテーマから、一般診療科(他科)との真の連携を行うという事を、たとえば口腔外科医が頭頸部癌治療の医療連携において外科医として参加する場合を考えてみる。「医科歯科連携」という用語は、あたかも口腔外科医の行う口腔癌医療が、頭頸部外科医、形成外科医、その他の医師の行う医療連携の外の枠組みに位置付けられているように感じられるのである。外科と内科が連携して医療を実施することを「外科内科連携」とは普通言わない。単なる「医療連携」である。しかし、歯科が参加すると「医科歯科連携」となり、口腔癌の外科医として参加しているのに、なぜか別扱いである。歯科が医学の一分野であるにもかかわらず、医療現場から別視されている現れである。歯科の医学からの分離を歯科医師自らが率先していると感じられる事項について、現代の歯学教育とともに考えてみたい。

横尾 聡 先生
群馬大学大学院医学系研究科 口腔顎顔面外科学講座・形成外科学講座
 教授


▶【教育講演】:口腔外科と病診連携
「口腔・全身クロストーク」と病診連携

 超高齢社会を迎えたわが国では、オーラルフレイル、咀嚼機能や嚥下機能の低下、口腔衛生状態の悪化など、口腔に関連する課題が増加している。
 また、口腔の状態が全身の健康に深く関与することが明らかとなり、これらは優先度・緊急度の高い社会課題として認識されている。こうした課題の解決には、口腔のことだけ、あるいは全身のみを個別に捉えるのではなく、両者の密接な関係性、すなわち「口腔・全身クロストーク」の理解と解明が不可欠である。この領域において、学術研究や臨床実践の両面から口腔外科が果たす役割は大きい。
 本講演では「口腔・全身クロストーク」を口腔外科における病診連携という視点から捉え、その臨床的・社会的意義について議論する。

星 和人 先生
東京大学大学院医学系研究科 口腔顎顔面外科学
教授


▶【全体総括】
これからの歯科医療教育

 1906年にスタートした医科歯科二元制のもとで専ら少数の専門学校で担われていた日本の歯科医学教育が、終戦直後に大学教育に格上げされ、医科とならんで6年制をとり、歯学部の数は29に急増して大活況を呈した時もありました。しかしその後異常とも云える医学部ブームとは対照的に歯学は次第に活力ある若者を捉える魅力を失ってきたように思えます。
 人間の社会文化機能が口に集中しており、また口は万病の入り口でもあります。最先端の生活医療を提供している日本の歯科医学は世界の最先端を走っており、その一方で死亡診断権まで確保して生命科学の粋を医科の各専門医と共有する機能を保持しています。厚生労働省から隔年で発出される診療報酬改定の概要にも医科歯科連携から多職種連携へ進める方向が示唆されています。これを土台として歯学教育がパラダイムシフトを果たすことができれば歯学部入学志願者は再び急増することと思います。
 本日のスピーカーの皆様は世代を超えて歯科医学の未来について心配され、しかも溢れる力量を持っておられる方々ばかりです。当日を楽しみにしています。

瀬戸 晥一
一般社団法人 国際歯科医療安全機構 理事長

参加費

 3,000円:歯科医師・医師
 1,000円:歯科衛生士・歯科技工士・看護師
 無料※ :学生・研修医
 ※学部学生、医療系学生、外国人留学生(大学院生を含む)

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